数年前に出身地である長野県伊那市にもどり、少しずつ地域の農業に参加しております。
なぜか幼少のころから農業に対する感覚は、他の仕事と一線を画するところがあり、自分にとって特別なもののように感じていました。
親や親族など自分の身の回りは教員が多く、「将来の職業」としては保育園のころより「学校の先生」などと答えていましたが、そういったものとは全く別の感覚で、私は農業というものを見ていたような気がするのです。
今になって思えば、この感覚は自分だけに端を発するものではありませんでした。
専業農家だったのは祖父の代まで。
年月が経って、歴史というものの重みを感じます。
大学のころ島崎藤村の『夜明け前』を読んだこと、
そしてnTechを学んだこと。
その中で、幕末から明治、あのとき日本人が何を考え、何を求め、どう行動していたのか、そしてどんなあり方で生きていたのか。
それらの一端を知った時に、、
いま地域で、年々減っていく農地。
売却されて宅地になるもの、耕作放棄されて荒れ地になるもの。
この河岸段丘のなだらかな水田ひとつひとつに、原生林を開拓した人々の思いと歴史が眠っているはず。
考えなければならない。
私たちの礎について。たとえ農業というしごとが人類から失われるときが来たとしても、それを拓いた人の意志だけは、ひきつがれなければならない。