水田の土手にかけた鴨の巣、そして卵。
7月の半ば。
田んぼの草を刈っていると
目の前からバサバサッ、と、
ハトより一回り大きくて、茶色・黒を基調とした模様の鳥が
飛び立ちました。
おや、鴨だ。
こんなに近づくまで逃げないとは、珍しいな。
と思い、そのまま1mほど草を刈り進めると、
そこには伸びた草に囲まれた巣と、
目覚めの時を待つ卵が10個ほど。
そうか、これを守っていたんだな。
人を警戒する野生の鴨が
ギリギリまで守ろうと抱いた卵たち。
卵の中では、どのような宇宙がうごめいているのだろう。
私たちの、自分と、自分の宇宙も、この卵たちと同じ。
殻を破り外と出会うときが、必ず来る。
鴨の卵たち、どうか無事に
外の世界と出会えますように。
7月末。
田んぼの水を見に行き、久しぶりにその土手へ。
あの時刈り残しておいた草に、鬱蒼と囲まれた巣には
殻のひとかけらも残っていませんでしたが、
荒らされたような跡もなく、
外の世界との感動的な出会いを享受する
鴨のヒナたちの姿を想像させてくれました。